現在進行中の研究内容


1. ナノスケール磁性体・超伝導体における量子サイズ効果 (出口研研究テーマ#2)

 強相関物質であるLa1-xSrxMnO3および高温超伝導体La2-xSrxCuO4のナノスケール結晶(粒子サイズ~80Å)を作成し、磁性、ESRの測定を行い、サイズ効果によって生じる新たな特性について研究を進めている。また、放射光をもちいて構造解析を行い粒子サイズなどを調べている。
 La1-xSrxMnO3およびLa2-xSrxCuO4の大きな特徴のひとつである”Srのドープ量の変化による低温相の変化”をうまく利用することにより同一物質、同一サイズでのナノスケール結晶におけるサイズ効果を直接的に比較可能にしている。
La1-xSrxMnO3についてはこれまでに約30Åサイズのナノスケール結晶の評価を行ってきた。現在は約80Å程度の反強磁性絶縁体相、強磁性絶縁体相、強磁性金属相の3つのナノスケール結晶の作成、測定を行っている。ナノスケールにすることにより通常のサイズ効果と正反対である転移温度の上昇を観測した。また、バルクとは異なる磁気相図を得ている。
La2-xSrxCuO4については反強磁性絶縁体相、超伝導相、金属相の3つのナノスケール結晶(約80Å程度)の作成、測定を行っている。

 発表論文 2003年度 No.3、9
 学会発表 2001年度 No.30 
        2002年度 No.5
        2003年度 No.1、6、13、18、30、33
        2004年度 No.2、14、26
        2005年度 No.1


2. 圧力下における新しい高温超伝導体の探索 (出口研研究テーマ#3)
   高圧下における輸送現象測定装置の開発 (出口研研究テーマ#5)

 銅酸化物高温超伝導体はCu-O平面であるのに対し、Oの周期律表の下の原子であるSを含むCu-Seの2次元平面を持つ物質La1-xSrxCuOSeの加圧下における磁気測定および電気抵抗測定を行っている。
加圧下での電気抵抗を測定するために、CuBe製のピストンシリンダータイプの電気抵抗測定用圧力セルの開発を行い、現在までに8kberの圧力を印加し、磁気測定および電気抵抗測定に成功している。La1-xSrxCuOSeはSrドープの有無により圧力効果が異なり、興味深い圧力効果を示すことを発見した。この圧力効果はランタノイドおよびカルコゲン置換効果とも異なり、興味深い効果を示している。
また、ランタノイド、カルコゲン置換をしたCeCuOSの圧力下における電気伝導特性および磁性の測定も行い、研究を進めている。

 学会発表 2004年度 No.3、17
        2005年度 No.2


3. 量子スピン磁性体における圧力誘起磁性の研究 

 量子スピンラダー物質Cu2(C5H12N2)2Br4の加圧下での振る舞いについて、磁性、構造解析の観点から研究を
進めている。現在までにCu2(C5H12N2)2Br4は加圧をすることにより反強磁性秩序が誘起されることが判明しており、その発現機構について主に結晶構造解析を行い解明しようとしている。実験は高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリー内BL-1Bで行っている。
現在までに加圧下の単結晶および粉末X線回折実験を行っている。

 発表論文 2004年度 No.1
 学会発表 2001年度 No.9、21、28
        2003年度 No.2、10、13



4. 低次元磁性体における新奇な磁性の研究

 量子スピンラダー物質を新たに作成し、磁場中における新奇な振る舞いについて比熱およびNMRの測定を行い解明を行っている。
この物質は臨界磁場以上での磁場中においても有効スピンギャップが完全につぶれることなく残るという特異な振る舞いを示すことが比熱およびNMRの測定より観測された。この新奇な振る舞いについて研究を進めている。
また、元素を置換することによって得られるこの物質と同じ結晶構造を持つ量子スピンラダー物質は、
ラダーのJ、J||がほぼ等しいといった理想的なラダー物質であることが判明している。
これらの物質についてそれぞれの特異な振る舞いについて研究を進めている。

 銅酸化物高温超伝導体と同様にCu-O平面をもつ蟻酸銅4水和物は加圧することにより常磁性が誘起される。
この振る舞いについてX線構造解析を行うなどして研究を進めている。
また、この物質にMg置換することにより相互作用などの変化について調べている。

  発表論文 2004年度 No. 2
  学会発表 2001年度 No. 8、20、27
         2002年度 No.10、19
         2003年度 No.3、11、17、25、38、40
         2004年度 No.1



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