ナノスケール磁性体や超伝導体における量子サイズ効果



 ナノスケール(10〜100Å)の超微粒子磁性体は転移点以下で単一磁区を形成し、超常磁性を示すことが知られている。強磁性体では、超常磁性は微粒子全体のスピンが担うことになるが、反強磁性体の場合は、微粒子表面の反強磁性秩序で相殺されない余分のスピンが担う。このため、磁性に寄与するスピン数は10のオーダーと同一の大きさの強磁性微粒子と比較して極端に有効スピン数が少ない。ナノスケールの反強磁性体は量子揺らぎの大きいスピン系とみなせ、量子トンネル現象の観測に適したシステムである。磁性微粒子における量子トンネル現象は、近年測定技術と新物質の開発が進む中で実験的に研究が盛んになってきた。
 我々の研究室では、30または80Å程度の粒径分布の少ない均一な微粒子を作成するために、ゼオライトの一種で規則正しく細孔が配列しているMCM-41およびSBA-15を"容器"
として微粒子の作成を行っている。ナノスケール磁性体のスピン量子数有効スピン数を制御することにより、トンネル現象を系統的に調べていく。また、NMRやESRを用いた緩和現象による実験とあわせ、高周波域での交流磁化率の測定を行うことにより共鳴トンネル効果を直接観測する。
 強相関物質であるLa1-xSrxMnO3および高温超伝導体La2-xSrxCuO4のナノスケール結晶を作成し研究を進めている。
 La1-xSrxMnO3はSrのドープ量が変化することにより磁性相が変化する。Srのドープ量を0から増加させていくと、反強磁性絶縁体→強磁性絶縁体→強磁性金属へと変化する。この性質を用いることにより、同一物質、同一サイズでのナノスケール結晶におけるサイズ効果による各相の磁性の変化を直接的に考察することができる。現在各相のナノスケール結晶を作成し比較を行っている。
 La2-xSrxCuO4はLa1-xSrxMnO3と同様にSrのドープ量を変化させることにより磁性相が変化する。Srのドープ量を0から増加させていくと、反強磁性絶縁体→スピングラス相→超伝導相→金属へと変化する。La1-xSrxMnO3と同様に各相のナノスケール結晶を作成し、それぞれの相でのサイズ効果の違いを比較する。現在は反強磁性絶縁相および超伝導相のナノスケール結晶を作成し研究を進めている。


ナノスケール結晶の作成方法

              
MCM-41 or SBA-15         担持          ナノスケール微粒子